上京して、数年。大学4年生の私(小山内)は、就職活動の時期になってから「地元に帰らないの?」と聞かれることが以前より増えるようになりました。
地元。そこには見慣れた景色、気心の知れた友人たちがいる。それに加え、場所を問わず働くということもできるようになってきた時代。
生まれ育った町で暮らしを作っていくという選択肢がないわけではないけれど、それでも私は地元に帰ろうという気が、どうしてだか一向に湧き上がってきません。
一方で印象的だったのが、去年の年末、灯台もと暮らし大忘年会にいらっしゃってくださった、宮崎県小林市地方創生課の柚木脇さんという男性の言葉。地元・小林市についてのお話でした。
「都会で小林市をプロモーションしているときに『小林ってこんなところ』って言うわけですけど、実際にはちょっと違和感があったんです。(中略)それは地元が本当の意味で盛り上がっているのかという疑問があったから。地元にいるひとたちが『自分たちの町ってすごくいい町だよね』ってことを、もっともっと考えていかなければならないのではないかなと」(柚木脇さん)
柚木脇さんの言葉を聞いて、やっぱり地元で暮らす人たちが誰よりも地元に対して考えないといけない。そうしないと、都会から帰りたい町はいつまで経ってもつくれないのかもしれない、と感じました。
地元が盛り上がる。地元の人が自分たちの地元をいい町だと思える。小林市にその取り組みがあるなら見てみたい。そんな風に思いました。
年度末には宮崎県小林市から取材のお話をいただいて、編集部は再び小林市に行くことに(そして私も)。
東京に戻ってきたいま、思い返される小林市の姿。風景の美しさはもちろん、うらやましいほどに地元を愛し、追いかけているひとたちの笑顔が忘れられません。
寄り添ってくれる自然がある
季節は3月。九州といえどもまだ肌寒い気候の中、最初にやってきたのは生駒高原。
霧島山の麓に広がるこの高原からは、小林市の町を一望できます。「花の駅 生駒高原」とも呼ばれ、春には菜の花やポピー、秋には「100万本のコスモス」が咲くんだとか。私たちの気分に寄り添うように自然もまた、四季折々で違った顔を見せてくれるのですね。
それにしても、驚いたのはこんなに綺麗な緑が広がっているのに、生駒高原にはわたしたちしかいなかったということ。雑誌に載るような自然満喫スポットは観光客がたくさんいるから、ひとりになれることって、じつはなかなかありません。
なんとなくひとりになりたいとき。ここだったら自分の世界に入り込めるかもしれません。嘆きやため息だって全部、この広い生駒高原が吸い込んでしまうんじゃないかと思うのです。
小林市を囲む山々もこんなに優しく寄り添ってくれるから。
帰りたくなる地元には、いつもどっしりと大きな、それでいて穏やかな自然があるのではないでしょうか。
新たな予感と期待に人が集まる
小林市では、毎月第二日曜に「こばやしマルシェ」という定期市が開催されています。2017年3月の開催場所は市の文化会館。小林市や近郊の町のお店が集まってマルシェを開催しています。
お花屋さん、お菓子屋さん、アクセサリー屋さん、農家さん。いろんなお店が文化会館の広場に立ち並び、その数なんと50店以上。これまで灯台もと暮らしで取材させていただいた小林市の方々も、たくさん出店していました。
マルシェには、老若男女が集まり、地元の商品に触れ、買い物を楽しみ、憩います。
子供達がアイスクリームや、クッキーを手に。お父さんやお母さんは、ベンチや広げられたテラスで談笑したり、体験型イベントで親子で遊んだり。
こばやしマルシェでは、ちょっとおもしろい光景を発見。店員さんが、他のお店の方たちのテントの中に入って立ち話をしたり、一緒に商品を売っているような光景です。
「これね、〇〇さんのところとコラボして作った商品なの」
「今日来れなかった友達のアクセサリーもうちの店に並べていてね」
これには驚きました。地元の方々が自分たちの知恵で、協力しながら新しいアイディアを形にしている光景。マルシェでは、人々の繋がりによって新しい出来事が生まれているようでした。
マルシェが開かれる日曜日はお店にとっては繁忙日。それでも日頃構えているお店を閉め、テントを張って商品を並べたりする手間ひまを承知でマルシェに出店しているのだと、小林市の地方創生課の方が教えてくださいました。
ただ、マルシェがあるだけでなく、そこにはいつも新しくて面白いことが生まれる予感がする。だから老若男女問わず、みんなが何かを期待してマルシェに集まりたくなるのではないでしょうか。
そしてきっと、このマルシェこそ柚木脇さんがおっしゃていた「地元のひとが地元のことをいいと思える」場なのではないか、と思いました。
変わらず待ってくれているひとがいる
こばやしマルシェで、特別に印象的だった女性がいます。それは、元移住支援員の上野祥枝さん。数年前、灯台もと暮らしでも取材させていただきました。
たまたま、すぐ近くのテントの下で話す男女2人を見て、上野さんが語ったのはこんな言葉。
「あの方たちもね。今年、小林から地元に戻っちゃうんだって。寂しいなぁ、すごく寂しい。だけど一回でも小林を選んでくれて本当に嬉しかった。次の場所でも彼らを応援したいなって心から思うの。だって、彼らのことすごく好きなんだもの」
「寂しい」と言いながら、上野さんの横顔は微笑んでいるようにも見えました。
また以前、灯台もと暮らしのインタビューでもこのように語っています。
「誰に対しても、それこそ移住してくれるかしてくれないか関係なく、問い合わせてくださった方がみんな幸せになれるように、誰にでも全力投球で、ていねいに対峙していきたいなと改めて思って」
この言葉は、やっぱり上野さん自身が小林をとても好きだから出てきたもの。だけど、無理に小林を大きく見せたり、自分の考えを押し付けたりなんてしません。
たとえ小林市を去っても、一度でも小林を選んでくれたひとたちを好きなことには変わりない。いつも相手の気持ちを第一に背中を押してくれる。上野さんの言葉の節々からお母さんのような温かさを感じました。
顔が見える距離にはいなくても、応援してくれるひとがいる。一緒に同じ土地で暮らしていたひとがいる。
上野さんのようなひとが暮らす土地を、もしかしたらひとは第二の故郷、と呼んだりするのかもしれません。
それから、以前取材させてもらった磁器専門工房「庸山窯」のオーナー・川路庸山さんのもとにも、お邪魔させていただきました。
突然の訪問にも関わらず、美味しいコーヒーとお菓子でおもてなししてくれた庸山さん。テラスから臨む小林の自然がどこまでも澄んでいて、吸い込む空気が美味しく感じます。
芸術家って気難しそうなひとが多そうなイメージだったけど、庸山さんは初対面の私にも「小林、楽しい?」と、温かい心遣いでいろいろと質問してくれました。
上野さんしかり、小林市のひとたちは、心優しい方々ばかり。よそ者扱いをせず、だけど全然強引じゃない。そんな人々だからこそきっと、こばやしマルシェのように、ひととの結びつきが強い場が生まれていくんだろうなぁ。
今回、初めて小林市を訪れましたが、庸山さんに「また、おいでね」と帰り際言われたときは、とても名残惜しくなりました。
「また、おいでね」。
今回の小林旅で、出会う人々にどのくらいその言葉をもらったでしょう。来るものは心良く迎え、去る者には陽だまりのような言葉を。
生まれ育った町から離れても、心まで離れてしまうわけじゃない。
「いつも、なにか楽しいことが生まれそうな予感がする」と編集部の先輩方が語る小林。今日も、ひととひととのつながりによって、小さなドラマが生まれているんだろうなぁと思うと、私もそこで暮らしてみたいと、やっぱり少し思ってしまう。
地元を愛する気持ちが、明るい未来をつくるのだろうと、小林にも自分の地元にも気持ちが向いた数日間でした。また、行こう、小林。
(この記事は、宮崎県小林市と協働で製作する記事広告コンテンツです)
今回訪れた場所
花の駅 生駒高原
住所: 宮崎県小林市南西方8565
電話番号:0984-27-1919
営業時間:AM9:00~PM17:00
(5月/10月)AM8:00~PM17:00
※季節にて変動します。詳しくはお電話にてお問い合わせ下さい。
アクセス:宮崎自動車道 小林ICから5分
公式サイトはこちら
こばやしマルシェ
会場:小林駅駅南公園
住所:小林市駅南296番地
お問い合わせ先:
こばやしマルシェ実行委員会事務局(小林市 地方創生課内)
電話番号:0984-23-1148
営業時間:通年。毎月第2日曜日に開催。9:00~13:00
アクセス:JR吉都線「小林駅」下車すぐ
公式Facebookはこちら
磁器専門工房「庸山窯」
住所:宮崎県小林市細野5740−1411
電話番号:0984-25-0144
営業時間:10:00〜18:00
定休日:不定休
アクセス:小林市役所から県道104号線を経由して車で約22分
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